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水島 治郎 (編集)

ポピュリズムという挑戦――岐路に立つ現代デモクラシー 単行本 – 2020/2/22
ポピュリズムが話題です。地方都市を車で走っていると、急に大きな「参政党」の看板があります。前からなんだろうなと思っていたのですが参議院選挙で大躍進をした政党でした。「ポピュリズムという挑戦」という本ですが題名からは肯定的なイメージがあります。内容はどちらかというと批判的です。ある意味、民衆を扇動するというイメージがあり、陰謀的でもあります。やっていることは何なのかというと、どこの国でもほぼ同じ手法です。
1.既存政党への痛烈な批判
2.既存メディアへの批判
3.SNS,ネットの活用
4.移民、外国人の疎外
5.自国民優先思想
6.議会制民主主義の肯定
上にあげた6項目は、参政党にすべて当てはまりますし、ヨーロッパ・アメリカのポピュリズム政党にも当てはまります。各国で味付け的な違いはありますがほぼ一緒です。
例えばドイツのAfdは上記に加えて明確にナチズムを否定しています。民衆が迎合しやすい政策・ポリシーかつ投票しても大丈夫と思わせるところがポピュリズム台頭のポイントです。基本的にどこの国でもポピュリズム政党は議会制民主主義を肯定しています。一部に直接民主主義(国民投票)重視の姿勢もあります。この姿勢が6番の項目で「投票しても大丈夫」感を醸し出すような仕組みです。
第二次世界大戦終了後、素晴らしい経済発展により豊かになった国々がポピュリズムに適合性があるようです。長い平和、経済的豊かさ、経済的格差拡大がポピュリズム台頭の前提条件とも思えます。ある意味、リベラルへの嫌気がポピュリズムへの集票につながっているようです。
そう考えると、高度に戦略的に構築された議席を獲得する政治手法なのかもしれません。
個人的には、ヨーロッパ・アメリカ・日本などで経済的格差拡大が大きくなったとしても、現在の貧困家庭が70年前の中流家庭以上の生活をしていると思っています。生活苦もありますがそれ以上に「誰かが私以上に得をしている。許せない」という感情の発露のように思います。言ってみれば軽度の「国民総被害妄想」かと思います。地球上の過半数を占める発展途上国の方々からみれば「金持ちの我儘」をキャッチ―にミートしたのがポピュリズム政党の台頭だと思えてきます。
ではこれは悪いことなのか良いことなのかというと、何とも言えません。 50年後、「あの時は良かったね」となるのか「あの時が最後に選択できる時だった」になるかは未来が見えない人間にはわからないものです。おそらく、どっちにしろ私は生きていないとは思います。
ポピュリズムという挑戦――岐路に立つ現代デモクラシー 単行本 – 2020/2/22
説明
かつて周辺的な位置にあったポピュリスト勢力は、今日世界各国で議会政治に参入し、存在感を増している。ヨーロッパ、アメリカ、そして日本で民主主義への挑戦を続けるポピュリスト勢力の現在を詳細に分析し、政治の行方を展望する。執筆者=水島治郎、古賀光生、今井貴子、野田昌吾、土倉莞爾、伊藤武、作内由子、田口晃、中山洋平、西山隆行、中北浩爾。
■目次
はじめに……………水島治郎
第I部 ポピュリズムとは何か
第1章 「主流化」するポピュリズム? ――西欧の右翼ポピュリズムを中心に……………古賀光生
第2章 中間団体の衰退とメディアの変容――「中抜き」時代のポピュリズム ……………水島治郎
第3章 遅れてきたポピュリズムの衝撃――政党政治のポピュリズム抑制機能とその瓦解? ……………今井貴子
第II部 揺れるヨーロッパ
第4章 「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭 ……………野田昌吾
第5章 フランス選挙政治――エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペンの対決 ……………土倉莞爾
第6章 イタリアにおける同盟の挑戦――「主流化」をめぐるジレンマへの対応 ………………伊藤武
第7章 オーストリアにおけるクルツ政権の誕生――主流政党のポピュリズム化とポピュリスト政党の主流化 ……………古賀光生
第III部 民主主義への挑戦――ローカルからグローバルへ
第8章 地方選挙での苦悩―― 二〇一八年オランダ自治体議会選挙で自由党はなぜ負けたのか ……………作内由子
第9章 直接民主主義(国民投票)とポピュリズム――スイスの事例で考える ……………田口 晃
第10章 革命と焦土――二〇一七年フランス大統領・下院選挙の衝撃 ……………中山洋平
第11章 トランプ時代のアメリカにおけるポピュリズム ……………西山隆行
第12章 地域からのポピュリズム――橋下維新、小池ファーストと日本政治 ……………中北浩爾
おわりに……………水島治郎
水島治郎(みずしま じろう)
1967年生。千葉大学大学院社会科学研究院教授。ヨーロッパ政治史、比較政治。『ポピュリズムとは何か――民主主義の敵か、改革の希望か』(中公新書、2016年、2017年度・第38回石橋湛山賞受賞)、『保守の比較政治学――欧州・日本の保守政党とポピュリズム』(編、岩波書店、2016年)、『反転する福祉国家――オランダモデルの光と影』(岩波現代文庫、2019年)ほか。
