運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」

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橘 玲 (著), 安藤 寿康 (著)

運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710) 新書 – 2023/11/10

 なぜこの本を読んだか?その理由は「運は遺伝する」という題名に対して「そんなバカな」と思ったからです。その時点で著者の狙った罠にはまっている読者です。
 読後の感想としては「運」というものに対する考え方が変わりました。私や一般的な方の「運」の定義としては「何かあったときに自然とよいことが起きたり」「自然と良いことを選択してしまう」という感じかと思います。それ自体は正しいと思うんですが、この本の考え方は以下のようなものです。
「運」がいい人にはそのようになる理由がある。
1.そのような結果を引き寄せる行動がある。
2.そのような行動をさせる性格や気質がある。
3.そのような性格や気質は遺伝に影響される。
上記のような論法です。
 遺伝というのは現代にはなかなか難しいものです。例えば知能であったり、犯罪を犯す可能性であったりが遺伝に大きな影響を与えられているとすると、生まれながらにして頑張っても無理ということになってしまいます。
 生まれたときに大まかな人生が決まってるとすると、努力することや自律することの意味が薄れてしまいます。アメリカンドリームや一発逆転人生なんて言う事もなくなり、予想されることになります。生まれた時に遺伝子検査をすれば、大まかな人生が決まってしまう世の中が来るかもしれません。そういうことは研究者や影響ある方の発言としては難しいので、いわゆる「遺伝の不都合な事実」とされることです。
 生まれたときに人生がすべて決まってしまうのであればかなり厳しい現実です。一方で身体的な特徴や病気にかかりやすさなどの部分は遺伝が大きく変わるというのは、現在では常識です。知能や性格が遺伝しないという不合理な判断は科学的というよりは社会的な判断かと思われました。
 著者は逆の面にも大きく論じていました。遺伝的に現代社会に不適合な子供を持つ親たちが「救われる」事実です。「育て方が悪い」「環境が悪い」ということをネガティブに非難されない世界になる可能性です。
一般人の普通並みの人間として60年以上生きてこれたことを感謝します。

運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710) 新書 – 2023/11/10

説明
知能格差社会の真実から遺伝的な適性の見つけ方まで

知性、能力、性格、そして運まで――。行動遺伝学が明らかにしたのは、人間社会のあらゆる面を「遺伝の影」が覆っており、それから誰も逃れられないということだった。私たちは、残酷すぎる世界の真実といかに向き合うべきか。理不尽を乗り越え、成功を手にするための方法は存在するのか。ベストセラー作家と、行動遺伝学の第一人者が徹底的に論じる決定版。

橘 玲
1959年生まれ。作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部超のベストセラーに。『永遠の旅行者』は第19回山本周五郎賞候補となり、『言ってはいけない――残酷すぎる真実』で2017新書大賞を受賞。著書多数。

安藤 寿康
1958年生まれ。慶應義塾大学名誉教授。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(教育学)。専門は行動遺伝学、教育心理学、進化教育学。『能力はどのように遺伝するのか』『教育は遺伝に勝てるか?』『「心は遺伝する」とどうして言えるのか』など、著書多数。

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