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小菅 正夫,山極 壽一

ゴリラは戦わない (中公新書ラクレ 575) 新書 – 2017/2/8
本書は2人のゴリラ教の信者の対談を本にしたと言う感じです。小杉氏は獣医師で旭山動物園に勤務して動物園の改革に従事した方です。旭山動物園の園長にもなられてます。山際氏は人類学・霊長類学の学者で京都大学の総長までなられた方です。
2人でアフリカに行かれてゴリラの観察もされたようです。ゴリラ教の信者なので内容はゴリラを称賛するものが多いです。信者の話なので2割ぐらいは割引いて考えた方が良いのかもしれません。それでもゴリラっていいなあと思うには充分です。強力だけど平和的、背中の威厳で群れを率いる家族愛、無用な警戒をしない楽天的な性格は尊敬したくなる動物です。面白いのがゴリラとチンパンジーと猿を対比されているところです。例えば食物の分割ですがサルは強いものが独り占めが基本です。その残りをほかの猿が食べる。チンパンジーはもう少し民主的ですがやはりリーダーが大目に取る、または最初に取るということのようです。ゴリラは食べるものを群れの中で分けるようです。リーダーと言いましたが、お二人はゴリラはリーダーがいるまで群れでチンパンジーと猿はボスがいる群れという風に表現されています。ゴリラはご存知のように非常に大きくて力も強いですが、外敵に会った時には胸をたたいて威嚇します。しかしほとんどの場合実際の戦いにはならないようです。威嚇で相手をビビらせてさせるというのがゴリラの戦略です。ゴリラどうしても同じようです。
また動物園で飼っていた動物を野生に戻すという場合にそれが難しいという話も興味ありました。彼らは狩猟採集民のような生活ですので、多種の食糧を少しずついろいろなところで食べるという生活のようです。ジャングルに離すと動物園で飼っていた動物は何が食べれるかわからないようです。それを親から教えてもらっていない。教えてもらっていないことはできない。過去にもそのような理由で餓死してしまった事例も多いようです。当たり前のことですがなんとなく動物は食べるものがわかっているのかなと想像してました。
小菅氏の話で動物園の飼育係というのは本当に動物を愛しているということがわかりました。小菅氏は獣医師なので動物には一番嫌われているというふうに書いてました。わかるような気がします。犬猫を飼っている方は思い当たる節があると思います。
動物に近い人の視点を少しだけ垣間見た気がします。犬猫以外の動物でも似たようなところがあるみたいです。読んでよかったと思う本です
ゴリラは戦わない (中公新書ラクレ 575) 新書 – 2017/2/8
説明
ゴリラが知ってる幸せの生き方とは何?
平和主義、家族愛、楽天的人生…。人間がいつのまにか忘れた人生観を思い出そう!
京都大学総長の山極寿一先生と旭山動物園の小菅正夫前園長の異色の対論集。AI化する現代社会の中で生きる人間社会に一石を投じる一冊!
小菅正夫
前旭山動物園園長。1948年生まれ。北海道大学獣医学部卒業。閉園の危機にあった旭山動物園を行動展示などで改革し日本一の動物園に立て直した。現在は札幌市円山動物園の改革を札幌市から依頼され実行している。柔道四段。北大柔道部で主将を務めた。
山極寿一
日本の人類学者(人類学・生態環境生物学)、霊長類学者。学位は、理学博士(京都大学・1987年)。京都大学名誉教授[2]、総合地球環境学研究所所長。
日本学術振興会奨励研究員、財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科教授、京都大学大学院理学研究科研究科長、京都大学理学部学部長、京都大学総長(第26代)、一般社団法人国立大学協会会長(第26代)、日本学術会議会長(第29代)などを歴任した。
京都大学大学院理学研究科博士課程修了。専攻は人類進化学。特にゴリラの生態から、人類の起源を探究する。霊長類学の観点から現代社会の問題も論じる。著書に『森の巨人』(1983年)、『ゴリラとヒトの間』(1993年)、『家族進化論』(2012年)など。